合気道は多人数どりがあり、
複数の相手に対処する稽古があります。
合気道の達人、植芝盛平、塩田剛三から言わせると、
多人数は1人を扱うのと同じらしいです。
また、合気道の技は3000以上ありますが、
そのすべてが150本程度の基本技の応用です。
そして、その150本の技は、
全て「構え」と「基本動作」に集約するとのこと。
「構え」と「基本動作」と7つの「合気道の基本」を、
合わせれば合気道はできるというのです。
7つの「合気道の基本」については下記。
基本動作はある程度、出来るようになっても、
技を行うと、その基本動作が活かされないことが多い。
どんどん技を覚えていくことも重要だが、
その都度、しっかり基本動作ができたのか、
もしくは、この動きがどの基本動作と同じなのか、
考えていくと正確な動きが出来るかもしれません。
下記は塩田剛三の、
合気道の技の概念について述べた文章です。
合気道の技は、一言でいえば、
剣の理合を体に活かして行う体術と言ってよいでしょう。
剣の理合いを体に活かすのですが、
今の剣道とは構えも異なりますし、
剣道のように試合を行うためのルールも
ありませんし、事実試合形式はとりません。
従って現在のいわゆる剣道とは異なるわけです。
合気道は実戦を建て前にしていますから、
極端な言い方をすれば、
「技はあって、無きに等しい」
とも言えるのですが、
それでは稽古ができませんので、
実戦のあらゆる場合を想定して、
いろいろな技を組み立ててあります。
合気道の技は、
形稽古である。
塩田剛三の合気道は、
技を掛けるほうも受けるほうも、
極まった動きがある。
初心者の人はまずは、
頭で考えながら技を行います。
中級者は技を言われたら、
一瞬で技の一連を思い出すことがイメージでき、
技を行います。
上級者は技を言われたら、
何も考えずに動き、最後まで流れで技を行うことが出来ます。
中級者から上級者は、
長い道のりだと思います。
黒帯でも、ひたすら無になるまで
技を繰り返す練習をしていなくては中級どまりです。
塩田剛三の言っている、
「技はなきに等しい」とは、
技を考えずに行うことが出来る段階で、
正面を打たれたり、片手を持たれたりしたら、
すぐに技が出来る状態のことを言います。
技の概念
①一対多
そもそも合気道は一人で
多数を相手にする場合を想定しています。
それゆえ、敏捷な動き、体勢のとり方など、
それなりの心構えが必要ですが、
実は相手も人数が多いと、
仲間同士の衝突や、
剣を持っているときは味方を斬るなどの危険があり、
一人の相手だけでなく、
味方同士にも気をくばり、
注意が分散するものです。
こちらとしては、
そこに相手の隙を見るわけで、
複数がかかってくる場合でも、
おのずから寸秒のずれが生じがちです。
ずれがあれば、寸秒の間隔を置いて、
一人ずつを相手にするのと
同じ結果になるとも考えられるのです。
植芝先生の武道奥義の中に、
敵多数我をかこみて攻むるとも一人の敵と思いたたかえ・。
という歌があります。
それで、稽古はまず一対一で始めるのが原則となるわけです。
② 一対一
一対一の技には徒手対徒手、
徒手対武器、
武器対武器がありますが、
結局は徒手対徒手が基礎で、
他はそのバリエーションに過ぎません。
© 徒手対徒手
この場合、立ち技、坐り技、前技、
後ろ技などがあり、
それぞれに投げ技、
押え技、捕り技、きめ技等があります。
これらの技の中に、打ち手、
当て身、逆、蹴りが入ったりします。
但し、合気道ではほんとの逆はむしろ数少ないと
言えましょう。
この逆とは、逆間接に極めるということ。
一見、逆間接に極めるように見える技でも、
逆間接には決めていません。
合気道をしたことがある人は、
肘締め、肘当て呼吸投げなど、
逆間接で極めているではないか!?
と反論が起きそうですが、
違います。
例えば、肘締めで逆間接に
極めているように見えますが、
詳しく言うと違うのです。
肘を逆間接に極めようとすると、
相手の肘が痛いだけで、
反発心が生まれます。
反発心を生むような技は、
合気道ではありません。
相手の腕を優しく包み込み、
力を抜いて技を行うと、
相手の肘に技が効くとい訳ではなく、
相手の身体全体に響くような技を行います。
肘が当たっている仕手の手は、
柔らかく、反抗する気も起きません。
個々の技の種類は三千ほどになりましょうが、
その基本になるのはたかだか百五十手ほどで、
この基本技を反復練習すれば、
全般に通じることができるのです。
さらにこの基本技の基礎になるのは、
実は次に挙げる基本姿勢、
基本動作に収約されるのです。
最も大切なのはこれだと言っても過言ではありません。④基本姿勢いわゆる構えの姿勢です。半身に構えます。その場合右半身と左半身があり、互に同じ半身をとったときを相半身といい、一方が右半身、相手が左半身のときを逆半身といいます。すでにこの構えの時から、「合気道の基本」に述べた素直な心と安定した重心が要求されることはもちろん、次の基本動作に移る前提でもあるので、合気道のすべてはここから発するだけに、基本姿勢ー構えーが最も重要であり、正しい構えがとられるかどうかが、今後の技の上達を占う鍵となるのです。⑤基本動作これには、体の更1(引かれた場合)、体の変更2(押された場合)、臂力の養成1(前進運動 )、臂力の養成2(重心の移動、終末動作1(引かれた場合)、終末動作2(押された場合)の六法があります。このいずれも、構えに次いで重要な技の基本ですから、「合気道の基本」で述べた素直な心、安定した重心、動中静を持す、対すれば和す、タイミング、呼力と集中力、円運動が、この基本動作の中に要求されるのです。
従ってこれらの動作をただお座なりにやって、形だけで、済ませている限りは、真の合気道とはほど遠く、技の上達は望めません。「合気道の基本」と「基本姿勢」と「基本動作」が三位一体となったとき、合気道の真価が発揮されるのです。合気道は仕手と受けが相対した時、互いに手(短刀、剣、棒などを持っているときはそれら)が届かない距離を保ち、また相手が蹴っても届かない間合いを保ちます。このことは、むしろ合気道はすでに述べたように、一発必中で相手を制すことにあるので、相手が自分に触れるか触れないうちに相手を制する技ですから、最初の構えは、その主旨から相手がどうしても届かない間合いをとるのです。しかし、いろいろな技をするのに、それでは稽古ができませんから、基本動作のときから、手や腕や胸などを持たせての技法を会得するように反復練習するわけです。そして、その間に合気道の基本を体得するようにするのです。塩田剛三著「合気道人生」より